第二 不偸盗戒

   また、毘舎伽母の指の輪の 落ちて入江に沈みしも
   元の指端に還(かえ)りたるためしは実にいなまれず

釈尊祇園精舎にいます時、勝光王の大臣の夫人毘舎伽鹿子母
という信者女あり、三宝を尊信、宗団を外護すること一方
ならず、仏園林に来たり給うを歓喜に堪えず自らも行きて
聞法し愉悦快楽極まりなし、仏足を頂礼して帰りしが装身具
瓔珞などを忘れて家に帰る。
又海遊の際海中に落とした指環が買い求めた魚の腹中より
還える。天心に正直不偸盗戒護持の威徳なり。

第三 不邪淫戒

   影勝王の像の子の産に臨みて悩みしを牧牛の女
   の操もて誓いて分娩せしめたり 
影勝王とは摩訶陀国阿闍世の父 頻婆沙羅王、約して
影勝王と言う。
牝象の難産に際して王、二万の彩女に命じて曰く
誰か真実語をもって誓ってこの象をして分娩せし
めんやと、時に二万の彩女唯黙然として互いに
相みて語せず。末席に牧女あり、進んで王に申す。
妾少小より今日に至るまで我が夫主の他の男子に
対し一言一支も相触れしことなし。
この言真実ならば願わくば此の象速やかに分娩
せしむべしと、語に従い子象産門より出ず。
凡そ真実語なるものは是の如く無形中に功徳あり。
二万の彩女この牧女一人の清操の功徳に及ばず。
これ有形美は無形美に如かざること慚ずべきに
非ずや。世人、有形美を勉めて無形美を勉め
ざるは十善業道の深旨を知らざるの過なり。


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