第四 不妄語戒

   斑足王の猛悪も 実語のとくに感悟して
   九十九余の命をも放ちて道に入りにけり

 昔天竺に斑足王という悪王あり、普明王という王の不妄語の徳に
 感じて自から悔いて仏道に入りし因縁なり更に問うべし。
 普明王の偈
 実語は第一の戒なり。
 実語は昇天の梯子なり。
 実語は小にして大なり。
 妄語は地獄に入る。
 我今実語を守る。
 寧ろ身と寿命を棄つとも
 心に悔恨有ることなし
 斑足王も邪教邪学を改めて
 仏道に帰依したりと。

第五 不綺語戒

   言辞弁舌明瞭に生まれし種(もと)は不綺語なり
   時候和順に資産富み 草木さえ皆色ぞ増す。

綺語とは戯笑などの種々野卑の雑談を言うなり。

第六 不悪口戒

   人天中に香はしきものは善語に過ぐるなし
   妻子眷属和悦して上下人心、皆服す

 口は是禍の門、舌は是禍の根と言語慎まざるべからず。
 悪口の憎むべきこと論を要せず。
 そもそも、自他の差別を親愛憎の隔歴(かくれき)を懐きて
 己に順ずるものには愛心を生じ、己に逆らうもの
 には憎恚(ぞうい)を起す。十善業道経に不悪口の功徳に
 曰く。一に言葉に背かず、二に言葉皆利益(りやく)す。
 三、言葉必ず理に契(かな)う。四、言葉美妙なり。
 五、言葉承領すべし、六、言えば即ち信用される。
 七、言葉譏(そし)るべきなし。八、言葉悉く愛楽せらると、
 妙功徳を斯く該説せり。
 律蔵の中に畜生を罵詈すべからず、と制し、風雨を瞋罵
 せざれと戒めたまえり。
 蛇の類 室中に入るとも駆逐すべからず。やわらかなる
 帯の類もてかけて出すべしと。
 鳥雀鼠の類、田穀を食せしときも呵罵せざれ、告げて
 いうべし、我常に施善を願う、汝は能く我が穀を食し
 たり我をして今施善を行ぜせしめたりと決して悪罵
 せざれと示したまえり。更に問え。

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